TORAY
ENGLISH
DCA 2005
受賞作品
受賞作品ギャラリー
審査委員長講評
審査委員講評
授賞式
DCA TOP
受賞作品

審査委員講評
土佐信道 明和電機社長
神田サオリ アーティスト
ケビン・マヤソン 株式会社 レインボー・ジャパン代表取締役
株式会社レインボー・パートナーズ 代表取締役
斉藤典彦 東レ株式会社取締役 IR室・広報室・宣伝室担当
土佐信道
明和電機社長
総評
全体を見て感じたのは、非常にバリエーションが増えたということです。
それはなぜなんだろう、と考えたのですが、今までは、高いPhotoshopを買ってパソコンで絵を描く、ということに対して「構え」があったと思うんですね。それが、すべてが安くなって、ひとりひとりがパソコンを自分用にカスタマイズできるようになった。だから、リビングで描いたような気軽さがあるというか。おばちゃんが家計簿ソフトを使った後に絵を描いているかもしれないし、音楽を聞いた後にクワガタを描いているかもしれない。そういう、ひとりひとりのカスタマイズされたパソコンの中の空間の、ある瞬間をピッととって持ってきたような感覚がして面白かったです。
更にその空間は、パソコンによってインターネットにつながっているわけですし、そういった環境の中で、これから色んなものが交差していく場の一面としての「絵」が出てくるのかなぁ、という予感がしました。
受賞作品講評
■最優秀賞について
最優秀賞作品の大石晃裕さんの「再構生」は、イラストレーターのエフェクトを使って描いていると思うのですが、すごくうまく使っていると思いました。
他の作品が、「絵を描くこと」をパソコンでやっているのに対して、パソコンを「顕微鏡」や「虫眼鏡」のように、違うツールとして使って絵を描いている点が新しいですね。パソコンならではの絵筆の使い方をしていると思いました。それが1枚画だけではなくて、連続した絵にすることで、構造とかシステムのようなものを表現していて、この表現方法を使えば他にも色々描けるし、色々な広がりを感じました。
 
■優秀賞について
作品テーマ「香」の優秀賞作品、川崎ますみさんの「strange impression」ですが、「香」というテーマで、普通いい香りを描くところを、香りに感情を足して描いているのが印象的でした。僕がすごいと思ったのは、空間がとてもよく出ているところです。良く見ると瞳があったり、木のコラージュだったり、色々な素材をコラージュとして引っ張ってきているのですが、それをブラシで練り上げていって、きちんと空間を出して、絵として仕上げているところが面白いと思います。
 
作品テーマ「楽」の優秀賞作品、Tamara Agapova さんの作品は、ひとつ描いた鍵盤をエフェクトで変形させて配置しているのだと思うのですが、パソコンならではのうまい使い方をしていると思いました。絵全体がリズム感で構成されていて、アニメーションのひとこまを見る面白さがありました。
 
作品テーマ「兆」の優秀賞作品、久保田絵理さんの「今ねぇ、ちょっと準備してるとこ。」は、刺繍をするようにひとつひとつ細部から描いていって全体を仕上げている感じで、全体から描いていくのとは違う、奇妙な形が生まれているのがものすごく面白いですね。絵が大きく見えるというか。細部にもちゃんと世界があって、細部の面白さがすごくありますね。かわいらしさもいいですね。 普通こういうのをパソコンでやろうとすると、同じものを作って、あとはポコポコとスタンプ的に貼り付けて終わらせがちなのですが、ひとつひとつをすべて描いている、という迫力が出ていてよかったです。
 
■審査委員特別賞について
江橋俊枝さんの「くいしんぼ」。これはなかなか描けない絵ですね。この人はうまい下手よりも、描きたいセンスが強烈な人だな、と思います。この鳥も、好きで買って、自分ではかわいいと思っているんだけど、人が見るとなんだそりゃ、という小物でしょうね(笑)。そしてそこに影が紫かよ、とか、ぬめっとした光の感じとか、こうしなくちゃ気がすまないという感じが出ていていいですね。自分は正しいと思っているけど、人から見ると「あんたおかしいよ!」というタイプの絵ですね(笑)。でもそれが大きな魅力になっていて良かったです。
 
「おカアちゃんの大好きなドレス」の黒滝淳さんは、若い頃から版画をやっていらした方だと思うのですが、黒の画面から光を削って出していく感じにとてもよく似ていて、陰影が面白いですね。版画のキャリアを持っている方が、パソコンに置き換えて、「おカアちゃんもがんばってんのよ!」という(笑)、趣味ならではの自由さが出ていていいなぁ、と思います。いくつになっても女性は女性、という感じもいいですよね。非常にうまい方です。
神田サオリ
アーティスト
総評
今回から初めて審査に参加させて頂きましたが、自分の中の「デジタル絵画」のイメージを打ち破ってくれる沢山の作品に出逢え、個人的にも刺激を頂きました。日頃、デジタル技法を使わず、一点一点手描きで絵に向き合う者の視点で、審査させて頂きました。 特に注目したのは、観た者の胸に響く表現力、その人にしか描けないと唸らせる独自の世界感、発想の自由な柔らかさ、です。 作品テーマの解釈が十人十色なのが本当に面白かったです。やはり入賞された方は、テーマをまず自分の中で深く読み解いて、ひとひねりもふたひねりも練り込み、そのアイデアを独自の表現で描ききっている方です。「こゝろの柔軟さ」「世界観をたっぷり表現できる描画力」この二つをこれからも鍛えていって欲しいと思います。
また時として、アナログ的な「修正のきかない緊張感」を持って描く事も、どきっとする作品創りに大切だと思います。
受賞作品講評
■最優秀賞について
最優秀賞作品の大石晃裕さんの「再構生」は、「兆」というテーマに対して、「さなぎの中で再構成される昆虫の過程」を選んだ発想が、突出して面白いと思います。更に、そのアイデアを存分に伝える「絵」としての表現力とセンスに充ち満ち。昆虫の生命力と姿体の美しさをシンプルに魅せ、「そしてこれから」を想像させる素晴らしい作品だと思いました。
 
■優秀賞について
作品テーマ「香」の優秀賞作品、川崎ますみさんの「strange impression」は、香を具体的にかいでいる姿だったり、香を連想させるモチーフを描く作品が多い中で、香を「記憶を呼び戻すもの」と捉え、表現している事が興味深いです。痛々しい程の香。身体に染み付いたむせかえる匂い。確かな描画力で表現され、痛いけれど目をそらさずに見つめてしまう絵です。
 
作品テーマ「楽」の優秀賞作品、Tamara Agapovaさんの作品は、作者が音楽に気持ちよく浸り、こゝろ踊りながら描いたのでは。。。と、見ているこちらも楽しくなれる作品です。絶妙のバランスで、ゆらぎ、うねる身体を描く事で、「音」を感じます。鍵盤だったり音符だったり、絵に登場するモチーフや色味がとてもシンプルな事も、線のゆらぎの気持ちよさを伝えるのに一役買っています。終わらない舞踏会の楽しさを想像しました。
 
作品テーマ「兆」の優秀賞作品、久保田絵理さんの「今ねぇ、ちょっと準備してるとこ。」は、とにかく「描く楽しさ」に充ち満ちています。いたずら描きのような、気楽で肩の力抜けた、ほんわかした魅力。と思いきや、よく見るとものすごい描き込みがしてあります。ひとつぶひとつぶ描かれたドットで形創られるなんともいえない独特な存在感。執念とか執着力とか、描くことに向き合うパワーが「ほんわか」の底に感じられます。「兆」を「クリスマスの準備をするサンタクロース」に引っかけ、そのお題を自由にふくらませる発想力も素敵です。
 
■審査委員特別賞について
江橋俊枝さんの「くいしんぼ」は、「香」というテーマに対して、紫を持ってくるというのが、まず強烈でした。決して、美味しそうではない。でも、あるある、こんな香。
アメリカのスーパーのお菓子コーナーに並んでいる、舌に色がべっとり付いちゃうようなケミカルな香がします。「でもあの匂いが私は好きなのよ」という、自分の「好き」を自信満々に描き上げたパワーを感じる絵だと思います。こまかなテクスチャ、ぎらぎらの艶など、細部をこだわりぬいた描きっぷりも「香」の連想に拍車を駆けてくれます。
他のテーマの作品では、どんな「これが、好き」を表現しきってくれるのか、興味があります。
 
黒滝淳さんの「おカアちゃんの大好きなドレス」は、自分だけの秘密世界を愉しんでいる様が魅力的です。正直お歳を拝見して驚いた程、その自由な脳みその遊びっぷりが素敵。デートする時、占いをする時、踊る時、それぞれのシチュエーションに合わせてリップの塗り方が微妙に異なっていたり、指先の表情が細かく描かれていたり、一張羅のデザインが不可思議だけれど妙にエロティックだったり。女性ならではのこだわりが密に描かれ、構図、配色共に独自の魅力匂う作品です。
ケビン・マヤソン
株式会社 レインボー・ジャパン 代表取締役
株式会社レインボー・パートナーズ 代表取締役
総評
今年のDCAの応募総数は過去最多となり、デジタル表現活動は、急速に多くのクリエイターたちの国際的な標準となってきたように思います。こうした事実を目の当たりにすることは、やりがいを感じると同時に元気づけられます。10年以上前に私たちが初めてDCAを企画したころ、クリエイティブの世界では、「デジタル部門」という明確な分類がありました。多くのクリエイターは自身を「デジタル」か「アナログ」のどちらかに分類し、クリエイターとはこの2種類のどちらかであるかのような印象を与えていたのです。こうした壁がここ10年ではっきりと消滅したことは、今年のDCAに寄せられた作品が非常に多様性に富んでいることからもよくわかります。
受賞作品講評
■最優秀賞について
作品テーマ「兆」の大石晃裕さんの「再構生」は、魅力的な組作品です。このイメージ作品は、クワガタが混沌としたイメージの中から進化して、はっきりした成虫の形になるまでを描いています。作者がどのようにしてデジタル効果を様々に組み合わせ、このように素晴らしい作品を作り出したのか、たいへん興味をそそられました。大石さんは、デジタル・メディアをうまく使っています。彼が作り出すイメージを、もっと見てみたいと個人的に思いました。
 
■優秀賞について
作品テーマ「香」では、川崎ますみさんの「strange impression」が、具体的な体験の記憶を呼びさます香とともに、強烈な感情を効果的に伝えている、という点でユニークでした。川崎さんのコラージュは、特に血が流れる傷口と層になった眼のイメージが、ショッキングかつミステリアスです。このメディアで非凡なスキルを披露している川崎さんが、実はデジタル制作の世界に足を踏み入れてからまだ日が浅いことを知り、驚きました。
 
作品テーマ「楽」の優秀賞は、プログラマーであるTamara Agapovaさんの作品です。2つのイメージは、幻想的なだけでなく、動きと喜びという楽しげな感覚を伝えています。素晴らしいのは、鍵盤のイメージを巧みに扱って、このような真に迫った映像を作り出しているところです。彼女がこの作品の完全アニメーション版の制作を考えてくれることを望んでやみません!
 
作品テーマ「兆」の優秀賞は、久保田絵理さんの素晴らしい作品「今ねぇ、ちょっと準備してるとこ。」です。5つのイメージから成るこの組作品は、一見したところかわいらしく、童話の本のような印象を受けます。しかし、注意深く観察すると、イメージを形成しているドットの見事なまでのディテールによって観る人をぐいぐいと引き寄せます。こうした美しい作品を制作するのにたいへんな時間と労力を費やしたことでしょう。
 
■審査委員特別賞について
江橋俊枝さんの「くいしんぼ」は、作品テーマの「香」を表現するために、ユニークな色彩・イメージのセンスを発揮しています。鮮やかな様々の色彩が、かわいらしい鳥のキャラクターとともに、目を楽しませてくれます。チョコレートのように見えるけれどハイライト部分は紫色という背景が、変わった感じで美味しそうですね!
 
黒滝淳さんの「おカアちゃんの大好きなドレス」は、奇抜でいいですね!黒滝さんは、豊かでおもしろい才能の持ち主です。顔の表情、それぞれの人物のディテール、豊かな色彩、傑出したエロス、それらが一つの優れた作品を作り出しています。
斉藤典彦
東レ株式会社取締役 IR室・広報室・宣伝室担当
総評
今回から神田サオリさんが審査委員に加わってくださったので、審査会にも新しい視点が加わったように思います。
応募全作品を真剣に慎重に公平に審査しました。最優秀・優秀作品について、以下にコメントします。
受賞作品講評
■最優秀賞について
最優秀賞は全員一致で大石晃裕さんさんの「再構生」に決まりました。カオスの中からクワガタが産まれ出るというようなプロセスが描かれていて、イマジネーションが豊かで、組み作品としての面白さが際立っていました。モノクロームの画面の中で光りを浴びて溶け出しまた造形されるクワガタの透明感が新鮮で刺激的です。作者の才能を感じますし、さらに作品を見てみたいと思わせます。
 
■優秀賞について
「香」部門優秀賞は川崎ますみさんの「strange impression」です。見た途端に惹きつけられました。香りには心地よい香りもあれば、危険な香りや苦い香り、痛々しい思い出の香り、傷口に凍みる香りがあると、作者が語りかけているようです。そのナイーブな心が伝わる雄弁な作品です。
 
「楽」部門優秀賞はTamara Agapovaさんの作品です。何故か懐かしく感じるセピアカラーの情景の中に満ち溢れる音楽が聴こえてきます。五線譜が舞い、鍵盤が踊ります。子供の頃観たディズニーの「ファンタジア」という映画を思い出しました。
 
「兆」部門優秀賞は久保田絵里さんの「今ねえ、ちょっと準備してるとこ。」です。これはまた、なんと楽しく暖かい作品でしょうか。組作品で絵本が出来ます。心楽しいクリスマスがもうすぐ来るんだ。サンタさんも準備中。その造形力にも丁寧に書き込んだ細部の表現にも、クリエイターとしてのレベルの高さを感じます。
 
■審査委員特別賞について
審査員特別賞は江橋俊枝さんの「くいしんぼ」と黒滝淳さんの「おカアちゃんの大好きなドレス」です。江橋さんの作品はきれいでおいしそうで、夢があり、また触りたくなるような質感を感じさせます。黒滝さんの作品は、またなんと魅力的なんでしょう。着せ替え人形のようなおカアちゃんに万歳。
受賞作品ギャラリー審査委員長講評|審査委員講評|授賞式
Copyright Toray Industries, Inc. All Rights reserved.