DCAは東レが文化支援の一環として主催するコンピュータ・ピクチャーの公募展です。

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TORAY DCA Winner's TIPS
第14回 DCA2007最優秀賞受賞  黒滝 淳さん
キャラクターの一人ひとりに個性を
DCAには3回応募していただきましたが、初めにDCAに応募されようと思ったきっかけは何だったのですか?
このDCAが始まってから2-3年くらいに私の友人が応募していて、ホームページで見るようになったのですが、当時のDCAに応募されている作品の傾向と私の作品の傾向が違っていたので、毎年眺めているだけでした。当時はどちらかというと、重厚な感じの作品が多かったのですが、DCAも時代とともに、傾向が変わってきたので、出してみようと思いました。それがちょうど3年前。今回が3回目の応募です。
黒滝さんは前回、前々回と審査員特別賞を受賞されていますが、今回の作品はこれまでとは一線を隔したエネルギッシュな素晴らしい作品で、審査委員全員一致で最優秀賞となりました。これまでの作品と比べて何か取り組み方や手法等を意識して変えられたのでしょうか?
私だけではないと思いますが、1回目よりは2回目、2回目よりは3回目と、発展させて作ることを目標とします。今回は、2回目の作品を目の前に置きながら、自己反省をしながら作りました。もっと変化をつけてエクサイティングなものにしたいと。
前回、前々回は審査委員特別賞で、私は最優秀賞、優秀賞等には縁がないんだと思いました。実は、今年音沙汰がなかったら、DCAから足を洗おうかと思っていたんです(笑)。最後まで応募するかしまいか、悩んでいたのですが、応募してよかったです。
最優秀賞受賞の知らせを受けてどうでしたか?
うそー!?って感じでした。受賞連絡のメールの「最優秀賞」が間違いじゃないか、再三確認しました。
今回最優秀賞を受賞した作品「唄うママンとレデイ達」のイメージはどこから浮かんだのですか?
最初からはっきりしたイメージやアイデアはないんです。ただ、この作品に限らず、キャラクターを描くことに、その時すごくはまっていたんだと思います。描きながら、こういうキャラクターだったらこういう背景がいいかな、と試行錯誤を繰り返して、最終的に出来上がりました。
今回なぜ「彩」というテーマを選ばれたのですか?
直感です。作品そのもののイメージはまだ湧いていなかったのですが、「彩り。鮮やか。あ、これ好き」とピッタリと感じました。
今回の受賞作品でこだわった点を教えてください。
キャラクターの一人ひとりに個性を出すために、顔の表情、ドレス、小道具などにこだわりました。また、彼女たちの動作や画面全体の空気の流れにも気を遣いました。
どんな手順で作品を作るのですか?
作っていくときは、まず正面から。それに少しずつ動きを加えていって、顔をもう少しほっそりさせたいとか、表情をもっとお茶目にしたいとか、作り変えていくんです。
顔は石膏で作ったライブマスク(モデルは知り合いの人)を写真に撮影したものを原型にして、まず目も鼻もない状態を作ります。体は裸の状態を作ってから服を着せていきます。目は目の、鼻は鼻のレイヤーがあって、実際には全部で100枚くらい作ります。
それに微妙なディテールを加えていきます。ばらばらにしていかないと、修正するときが大変なので全部別々のレイヤーで作業します。シャープに出すぎると、貼り付けたようになって浮いてしまうので、エッジをぼかしたりしてバックに馴染むようにしています。まつ毛も1本1本書いて、ぼかしています。結構細かいんです。制作期間は1日8時間程作業して、1カ月くらいかかりました。
絵を描き続けていきたいという思いがCGへ
元々は版画家としてご活動されていたそうですが?
元々版画をやってはいたのですが、30代の時に「私の人生これでいいのか?」と疑問に思い、ある日決心して、身の周りのものを売ってお金を作り、ニューヨークに行きました。とにかく自分で何かを感じたい、とにかく学校に行こう、と思って。そこで、プラトという大学が経営している成人向けの版画の学校に2年間通い、リトグラフ(石版画)を学びました。それが本格的に版画を始めたきっかけです。当時、学校にいる日本人は私一人だけでした。コミュニケーションは英語でないと成り立ちませんから、クラスメイトにノートを借りて丸ごと写したり、辞書を引いたりして、独学で英語を身に付けました。日本では体験できない良いことも悪いことも経験でき、卒業までの2年間である種のたくましさが身につきました。卒業して帰国した後は、版画協会に所属し、作品を発表し始めました。
CGを始めたきっかけは何だったのですか?
版画は体力を使う仕事ですが、57歳のときに病気をして、その後は体力が落ちてしまい、絵にも勢いがなくなってしまったんです。でも、絵は描き続けていきたいという思いは持っていました。いずれCGを始めるなら今だと思い、60歳の時に一大決心をして、パソコンのパの字も分からないままに中古のマックを買いました。当時はCGで絵を制作する人たちは少なかったので、版画家からすると抵抗や葛藤がありましたが、私は版画もCGも作家のイメージ表現技法の媒体であると思うので、あまりこだわりませんでした。
投げ出さないこと、毎日続けること
パソコン初心者だった黒滝さんがCGの技術を身に付けられたのは、並々ならぬ努力があったのだと思いますが。
CGをマスターするためにどこかに習いに行ったという経験はありません。CGを始めた当時、グラフィック関係の専門学校の講師をしていたのですが、そこの教え子にパソコンの操作を教えてもらい、すべてをノートに書き留めて部屋中マニュアルだらけにして練習しました。そうしてコンペに出した作品は入選することができました。ただ一つ自慢できることは、投げ出さなかったこと、毎日続けたことです。続けるうちに自分流の使い方を見つけていきました。今回、DCAで最優秀賞をいただいて、CGをやってよかったと思っています。
今後はどういう作品を制作していきたいとお考えですか?
今後は、今回の作品のキャラクターをもっと発展させて作っていきたいと考えています。このキャラクターをちょっとしたグッズにできないかなとも考えています。とにかく、手でモノを作るのが本能的に好きで、モノを作っていられれば幸せなんです。作りかけのキャラクターには、「やあ、こんにちは」と声をかけたい気持ちになりますね。CGアートの魅力は、アナログで表現しにくいものを、画像ソフトを使うことによって面白い表現ができることです。CGには、まだまだ色々な表現がつまっているはずです。マンネリになってしまうと絵が良くならないので、これからも自分の技術は進化させていきたいと思います。
音楽・映画・舞台などの芸術作品からの刺激
黒滝さんのブログでX-Japanがお好きということを拝見したのですが。
見ていると底知れない魅力があるんです。特にバンドリーダーのYoshikiさんが好きです。YouTubeに掲載されている動画を、1週間続けて毎日朝から3時間片っ端から見ていたら、目が激しいドライアイになってしまい、3日間ほど瞬きするたびにしみるような痛みに襲われました。あれは地獄でした(笑)。
映画や舞台をよくご覧になられるそうですが、ジャンルの違う芸術作品を観て、黒滝さんご自身の作品の参考にされることはありますか?
映画、舞台からは、直接的・間接的にとても影響を受けます。絵画的な作品や、息をのむような奇麗な作品を見た後には、自分の作品にもその要素を取り入れます。芸術作品に触れないと、灰色の感覚になってしまうのではないかなと思います。また最近は、中国の色彩に惹かれて中国映画を見始めました。ある時期からその妖しい魅力に取り憑かれてしまったんです。私も中国独特の赤色を出したいと思うのですが、なかなか出せません。また、若手の現代アートと呼ばれる人たちの情報を肌で感じようと思い、「アートフェア東京」にも最近行きました。
最後に、これからDCAに応募されようと考えている方々へメッセージをお願いいたします。
とにかく毎日やることです。CGはツールですから、CGを使って、“何を”表現したいかをもつべきだと思います。
PROFILE
黒滝 淳(くろたき あつみ)。
アーティスト。本名:黒滝淳美(くろたきあつみ)。
1936年 東京生まれ。
1971年 プラト・グラフィックセンター(N.Y.)修了
1986年 現代日本美術展にて京都国立近代美術館賞、三重県立美術館賞受賞。
1970年より30年間日本版画協会所属
1970年より30年間東京デザイナー学院講師
2005、2006年度東レDCA審査員特別賞受賞
2007年度東レDCA最優秀賞受賞
第13 回 DCA2007 最優秀賞受賞作品「唄うママンとレデイ達」(テーマ:彩)
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